導入事例・お客さまの声

柴又の繁盛パティスリーが火星人を活用 ビスキュイ様

パティシエの未来を育てるお菓子づくり

お菓子屋ビスキュイ 様(東京都葛飾区)

東京・柴又の繁盛パティスリー「お菓子屋ビスキュイ」様。1996(平成8)年のオープン以来、地域に根ざした経営を続け20年。現在、平日に300人、繁忙期の週末は1日1000人もが訪れ、全国でもトップクラスの賑わいを見せている。
陣頭指揮をとるのはオーナーシェフ・駒水純一郎(こまみず・じゅんいちろう)様。「最新テクノロジーの活用で人材の能力を引き出し、パティシエの未来を明るくしたい」と語ってくださった。

 
 
新柴又駅から徒歩1分。下町情緒あふれる町並みの中、ヨーロッパ調の建物がそびえ立つ。23区内では珍しく駐車場も完備。近隣店との共有スペースも含め35台可。
 
独自の経営術でブランド力を構築
東京・柴又、行列のできる繁盛パティスリーとして知られる「お菓子屋ビスキュイ」様。年商5億3000万円。下町情緒が息づくエリアにありながら、洋菓子店単独店舗としての売上が全国トップクラスと異彩を放っている。1店舗ながら圧巻の品揃えでアイテム数は約250種類。旬の素材を使った色鮮やかなプチガトーが常時55種類、焼き菓子は80種類以上。季節に合わせて手づくりジェラートやチョコレートも豊富にラインアップされ、店内はお客さまの笑顔であふれている。
  

特徴的な外観は2度の増床と改築によるもの。現在の店舗は約250坪の敷地に3つのブロック(パティスリー・カフェ・焼き菓子工房)で構成される。
 

パティスリー
エントランス側から売り場に向かってのショット。


カフェ
「ビスキュイカフェ」ではケーキのほかランチメニューも。


焼き菓子工房
生産風景がガラス越しに見える。

 
「『火星人』はパティシエの便利な道具。
人手不足が加速する中、
業界のスタンダードになる日も近いのでは」


オーナーシェフ 駒水 純一郎 様
1968(昭和43)年3月東京生まれ。東京製菓学校卒業後、1989(平成元)年に帝国ホテルに入社。7年間勤務し、後半の2年間は休日を生かし個人店で修業して経営と技術を学ぶ。1997(平成9)年、製菓学校で出会った奥様・君代様(専務)と「お菓子屋ビスキュイ」オープン。2016年に20周年を迎えた。
 
「ここは東京でも下町。お年寄りやお子さまにも気軽に足を運んでいただけるように商品バラエティーの充実を大切にしています」と、オーナーシェフの駒水純一郎様。それでいて店内のプチガトーは平均単価380円、焼き菓子は110円とリーズナブル。地域ニーズに合った「下町価格」を実現している。

 
1店舗ながらアイテムは約250種類 !
地域№1の集客を支えるのは豊富なアイテムと少数精鋭のスタッフ。「商品の8割はどの世代にも親しみのあるもの、残りの2割は高い技術を必要とする本格菓子など個性あるお菓子で、後者はパティシエのモチベーションアップを目的に生産しています」

この多品種を支える製造スタッフはわずか16名というから驚きだ。生産効率への取り組みをお伺いすると、「特別な指示や計らいはしていません。19時半には全員退社することにしているので、決められた時間内で成果を上げて早く帰れと言うだけ(笑)。あえて他店との違いを言うなら定着率が高いことでしょうか。慢性的に人手不足の業界ですが、うちは10年超のベテランも多く感謝の気持ちでいっぱいです。経営者が集まると自然と採用難や早期離職の話題が多くなるのですが、特にこの数年は加速しているように感じます。オーナーが身を削ってさらに長く働いたり、アイテム数を絞って生ケーキ主体の経営を変えていったりと各店が対策を講じていますが、個人的にはそれではパティシエが育たず悪循環が生まれるだけじゃないかと…」。

駒水シェフのアプローチは正反対である。「まず、僕が最初に帰りますね(笑)。オーナーがいるから帰りにくいというだらだらした居残りはなくしたい。次に、プチガトー(小物ケーキ)を中心とした幅広い品揃えでお客さまをお迎えすることがパティシエのやりがいとお得意さまづくりにつながると信じて実行しています。就職面接で志望動機を聞くと、若い子は口を揃えて『スキルを身に付けて手の込んだケーキでお客さまに喜んでもらいたい』と言います。同時に、うちのような地域密着店では自家消費のケーキを目的に来店する方がほとんど。プチガトーづくりに注力してもらうことは、お客さまのためにもなりパティシエの自己実現をサポートすることにもなります」。
採算が合わないのでは。「もちろん、焼き菓子にも力を入れていますが商品力だけでは焼き菓子は売れません。ある程度のブランド力…高級店という意味ではなく、街のおいしい店としての信頼や実績、安心感が必要です。うちは昨年何とかギフトの売り上げが6割、3億円を超えましたが、特別な戦略ではなく地道に20年続けた結果だと受け止めています。プチガトーを食べていただいて、お祝いにアントルメを、最終的にギフトとして焼き菓子を選んでいただく。この繰り返しです」。
目先の効率と利益を求めず、一日一日とお客さまと従業員のニーズに向き合って応え続けたことが独自のブランド力の構築と、長期雇用という何よりの効率体制を実現してきたと拝察できよう。

 
魅力的な焼き菓子も豊富に
ボリュームいっぱいに陳列された焼き菓子は約80種類。1個100円の自家消費用から1万円を超えるプレミアムギフトまで。価格帯、シーン別に幅広いラインアップが取り揃えられている。





 
 
「火星人」と共存し能力を引き出す
火星人「CN580」と駒水シェフ火星人「CN580」と駒水シェフ生ケーキ主体の経営を続けたい―そんなビスキュイ様が、2014年に火星人「CN580」を導入。業界には衝撃が走ったことだろう。
 
「『火星人入れたんだって?』と興味を持って見学に来る方、冷やかす方、両方いますね(笑)。どうも業界には、僕たち個人店が包あん機を導入すると、手づくりから機械的な量産にシフトチェンジするというイメージが強いようです。実際はオーナーの匙(さじ)加減だと思います。僕は、火星人はパティシエの便利な道具だと思っていますし、スタッフにもそう伝えています。フードプロセッサーでアーモンドを砕くのと同じ感覚です。導入目的も実稼働もメインはクッキー生地の定量分割。年間で20数種類の商品に使用していますが、フル稼働の予定はありません。珍しいでしょうか?(笑)。現在、冬場は週2~3回動かすこともありますが、夏場は週1回の稼働で十分。とても便利な一方で、生産におけるウエイトを高くすると『今まで積み上げてきたスキルは何だったんだろう』と揺らいでしまう者もいるのではないかと。だから、時短の選択肢の1つであればいいと思っています。夜中に目をこすりながら10g、20gとただ生地を量っているのなら、分割は火星人に任せて、スキルの必要なお菓子に腕を振るってもらって早く帰ったほうがパティシエの未来も明るいですよね」。
  
続けて、火星人導入を機に開発されたのが、「柴又ミルク饅頭まねき小判」と「生クリームトリュフ」だ。「せっかくだから包あん機能も活用してみようかと。こういった最初から手づくりが難しい商品はパティシエの技術と住み分けできているのでいいですね。スタッフも納得して活用しています。最新の技術とうまく付き合って、現在勤めてくれている従業員の能力を最大限に発揮するという考えは近い将来業界のスタンダードになっていくのではないでしょうか。今後、労働人口が減り、人を増やすのがさらに難しくなると分かっています。労働環境や条件の整備もますます厳しく迫られるでしょう。個人店のオーナーが決断を迫られる時も近いと思います」。


「東京柴又どころ(和三盆・ちょこ・ごま)」
(9個入り1箱600円、1個10g)
 
人気のブールドネージュを手づくりの配合そのままに機械生産に移行した商品。


「柴又ミルク饅頭 まねき小判」
(6個入り1箱820円、1個35g)
 
乳菓を縁起の良い小判型に焼き上げ、和風ギフトとして販売している人気商品。


「とろける生クリームトリュフ(チョコレート・抹茶)」
(12個入り1箱1080円、1個22g)
 
フレッシュな乳脂肪36%の生クリームを口溶けの良いチョコレートで包んだ逸品。※表示価格はすべて税込み

 
 
「カウンターのあるお寿司屋さん」
最近の経営環境と取り組みをお伺いすると、「いつも危機感を持っています。大手さんやコンビニの担当者が専門店で修業する時代。年々お菓子のクオリティーも上がっていますし、個人店ではスケールメリットのある価格に敵わない。似たようなお菓子をつくってわざわざ先方の強みと戦うつもりはありません。実は、火星人のフル稼働を望まない理由はここにもあります」。
 
続いて、「気構えとして、スタッフに話しているのは『カウンターのあるお寿司屋さんであろう』ということです。大手さんやコンビニがお手ごろ価格の家族で楽しめる回転寿司なら、僕たちが目指すのはカウンターのある地域一番のお寿司屋さん。『目の前のお客さまが欲しているものを素早く新鮮な状態で提供する』という姿勢―この、鮮度と個別対応可能なフットワークこそが回転寿司との違いであり、個人店の強みではと。僕たちはその日仕入れたレモンの皮を擦って焼き菓子に鮮度を持ち込むことも、ご要望によりオリジナルのお菓子をつくることも可能です。もっとお客さまと距離を縮めるには、僕も含めたスタッフ全員が技術的なスキルだけでなく人間力とでも言える総合的な力を継続して高めていかなければ。好きなことを一生懸命やることがお客さまの笑顔につながる良い仕事です。この思いをスタッフと共有して未来につなげたいですね」。
  
自店だけでなく、業界の未来を担う若手すべてへのエールのように感じられた。

 
つつむ No.150号 (2017年7月号)掲載
※文章内の表現・表記は、すべて取材当時のものです。
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