導入事例・お客さまの声

「マルチサンドライン」導入で「切腹最中」の生産力増強  株式会社 新正堂 様

継続していくために変わり続けなければならない

株式会社 新正堂 (しんしょうどう)様(東京都港区新橋)

「切腹最中」1個230円(税込)
奇抜で斬新な形状、ネーミングに目がいきがちだが、渡辺社長は「品質」というお菓子の本質にとことんこだわる。「進物菓子は、買った人が満足するだけでなく、もらって食べた人も満足して、また食べたいと思ってくれないと意味がない」。材料から製法にいたるまで、これで良しというゴールはなく常に試行錯誤して高みをめざす、向上心に満ちあふれている。
 

東京都港区新橋。日本有数のビジネス街であるこの地に、創業大正元年、百有余年にわたり新橋の発展とともに暖簾を守ってきた老舗菓子店がある。店名の「新正堂」は、新橋に根差し、大正時代から菓子店を生業としていることを表している。その伝統の暖簾を守り継ぐのが、三代目社長の渡辺仁久様。大きく口の開いたユニークなかたち、奇抜なネーミングで全国にもその名が知られるお菓子「切腹最中」を考案したその人である。昨今「切腹最中」はビジネスマンの間で、取引先などにお詫びに出向く際に持参する「謝罪菓子」と呼ばれている。お菓子のあらたなジャンルをも創出する発想力について、さっそく渡辺社長を訪ねて、お話をうかがった。
 
  
代表取締役社長 渡辺 仁久 様
看板商品「切腹最中」を考案した三代目社長。都内の有名なデザイン学校でデザインを専攻した経歴を持つ。この経験が、それまでの菓子業界に定着していた観念とは違う視点の発想を生み出す原動力になっている。現在は、港区観光協会会長も務め地域活性化にも力を注いでいる。
  
新正堂店舗外観
1階が店舗、1階奥と地下に生産スペース、3階にオフィスを置く、まさに都市型の店舗兼工場である。

 
その名は「切腹最中」
新正堂様を訪れると、渡辺社長は、初対面の私をまるで旧友に会うかのように親しみ深く迎え入れてくれた。まずはどうしても聞きたかった「切腹最中」の発想についてうかがってみた。「先代の時は、『豆大福』が看板商品でした。そこそこ皆さまにごひいきにしていただいていたんですが、やはり日持ちしないのが課題でした。自分の代になって、何か考えなくちゃということで出てきた発想が日持ちのする最中と、もう一つが忠臣蔵だったんですよ。この店が建つのは、浅野内匠頭終焉の場所、田村右京太夫の屋敷跡地。まさに忠臣蔵ゆかりの地なんですよ。これを使わない手はない。それで浅野内匠頭が切腹した場所だから『切腹最中』と最初は単純な思いつきだったんです。ご想像の通り、周りからは大反対を受けましたね。和菓子にそんな縁起の悪い名前はふさわしくないってね。でもね、いろいろと代替案を検討しても、結局最初に戻ってしまうんです。きっと浅野の殿様が私にそうしなさいと天の声を送ってくれていたんだと思いますよ(笑)。最後は天の声が妻の後押しに代わり実現しました」。

 
意外な使い途
渡辺社長は、商品の持つ潜在能力には自身も驚いたという。「切腹最中」も発売から徐々に売れ始めたころ、進物に日持ちのするお菓子をと考え出したこの商品が、意外な用途で使われ始めた。「最初は、とあるお客さまにこんな相談を受けたんです。商談のトラブルでお詫びに行く際、持参する菓子折りでいいものはないかと。そこで、自分の腹は切れませんが、そのくらいの気持ちですと『切腹最中』を使ってみてはどうでしょうと、冗談交じりで言ったんです。これが当たりまして、お詫びに使う進物菓子として大変好評をいただきました」。その後「切腹最中」は、「謝罪菓子」としてマスコミに取り上げられることもしばしばあり、発売当初の意図とは違うかたちで知名度を得ていったのである。
   
「マルチサンドライン」による「切腹最中」の生産
新正堂様では、最中皮の供給からあんこで求肥を包あんし最中皮にのせて搬出するところまでを自動化している。手づくり時には、1日に800個の生産が限界だったと言う。その後、弊社火星人を導入して1時間に1,200個に生産量を上げ、さらなる需要に対応するため、このたび「マルチサンドライン」に切り替えて1時間に2,400個の生産を可能にした。最盛期には同機にて日産最大10,000個を超える生産をしている。  
   
    徳さんからお千代さんへ
知名度が上がり需要が増える中で、生産体制も都度見直してきたという渡辺社長。「当初『切腹最中』は、あんこを最中皮でサンドしているだけでしたが、最中の口が閉じてきてしまうのを避けるため、あんこの中に求肥を入れるようになったんです。つまり包あんするようになった。自動化にあたっては、まずレオンさんの火星人®を導入させていただきました。最近それでも追いつかなくなりまして、最中の皮の自動供給から、包あん、皮への吐出、搬出までを自動化した『マルチサンドライン』を導入して、1日平均6000個の生産体制を組むことができました。『マルチサンドライン』はいいですね、求肥をあんこで包んで出しても、自動供給する最中皮のど真ん中に吐出できるんです。これは、機械にしかできない業ですよ」。新正堂様では、「火星人」のことを「徳さん」、新しく導入いただいた「マルチサンドライン」を「お千代さん」と親しみ込めて呼んでいる。「『徳さん』というのは先代の徳司の愛称で、『お千代さん』は、先代の妻、千代子の愛称なんです。2人とも働き者だったので、それにあやかって、そのまま機械の愛称にしています。店先から『マルチサンドラインの生産準備して』っていうより『お千代さん、準備お願い』って言ったほうが、お客さまに聞こえがいいでしょ」。渡辺社長の粋な演出だが、その気持ちには先代への深いリスペクトが感じられる。今回「切腹最中」の生産は「徳さん」から「お千代さん」にバトンタッチされ、生産のギヤも数段階アップした。今後も徳司様、千代子様の活躍に恥じない力を発揮していくに違いない。  
  

写真左:
人気商品「景気上昇最中」 1個190円(税込)
現在「火星人(徳さん)」で生産している。
 
写真右:
新正堂店舗。多い時には、1日500人のお客さまが訪れる。最近では、観光客の姿も多く見られる。
  写真右から、社長・渡辺仁久様、社長夫人・則子様、長男・仁司様、三女・里沙様、長女・暦様。工場内では「徳さん」「お千代さん」がご家族を盛り上げる。写真右から、社長・渡辺仁久様、社長夫人・則子様、長男・仁司様、三女・里沙様、長女・暦様。工場内では「徳さん」「お千代さん」がご家族を盛り上げる。    閉店後だけ現れる四十七士が人気に!
新正堂様の店舗で、閉店しないと見られない「赤穂浪士・四十七士」が話題になっている。閉店後に下ろされるタペストリーに描かれた四十七士。夜はご覧の通り幻想的に姿を現す。最近は、忠臣蔵ファンのみならず、外国人観光客も多く訪れる。開店していない時に人を呼べる演出も渡辺流の発想である。 
次につないでほしい
渡辺社長に今後の展開について聞いてみた。「長男がうちに入ってやってくれていますが、『切腹最中』の継承よりも、『新正堂』の名前をつないでいってほしいと常に言っています。伝統は革新の連続だって良く言うじゃないですか、まったくその通りだと思います。『切腹最中』は、『新正堂』を未来へつないでいくための現段階での手段であって、次の時代にも有効かはわかりません。物事を継続していくには、潮目に合わせて、時に大胆に変わっていかなくちゃいけないんですよ」。「新正堂」を受け継ぎ、時代にあわせて変革を実行してきた渡辺社長ならではの哲学がそこにある。そしてその手には、次代に渡すバトンがしっかりと用意されている。
 
 
つつむ No.156号 (2019年1月号)掲載
※文章内の表現・表記は、すべて取材当時のものです。
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