白あんとカカオのマリアージュ
新しいお菓子を横浜から発信

火星人「CN580」ご活用事例

パティスリー ラ・ベルデュール様(神奈川県横浜市)

神奈川県の交通の中心であり、多くの鉄道が交わるターミナル駅でもある横浜駅。同駅内の商業施設に、ひときわおしゃれなチョコレート専門店がある。「BLUE CACAO(ブルー カカオ)」。青いカカオの実のオブジェが印象的なそのお店には、ショコラティエが提供する本格的なチョコレートを求めて県内外から多くのお客さまが訪れる。最近、その人気店でチョコレートに加えて新たにラインアップされ大変好評を得ているお菓子がある。それが今回ご紹介する焼き菓子 「SHIRO CACAO(シロカカオ)」だ。この新商品、そしてお店を手掛けるのは、横浜市泉区緑園にお店を構えるパティスリー「ラ・ベルデュール」のオーナーシェフ服部明様。チョコレート、ジェラート界で著名な賞を数々受賞した同氏が展開するお菓子、そしてブランドについて、今回お話を伺う機会をいただいた。

横浜発の新感覚お菓子

そのお菓子は、カカオの実をモチーフにした洗練された形に、白あんの上品な甘さ、後からくるカカオの深い味わいと風味が至福のひとときを演出してくれる。まさに新感覚のお菓子である。この「SHIRO CACAO(シロカカオ)」について服部様に開発のいきさつを伺った。「新商品として考えたわけですが、私の経験上、いろいろと突き詰めていくと最後は意外とシンプルなものに行き着くことが多いんです。今回も発想は実にシンプルで、日本古来のお饅頭と私たちが厳選したカカオをマリアージュするというコンセプトで和洋折衷のお菓子を目指しました。発想はシンプルだったんですけど、誰もまだやっていないものだったので、途中は試行錯誤の連続でしたね。でも誰もやっていないからこそ完成したら、きっとおもしろいものができるとスタッフ全員が高いモチベーションをもってやりきりましたね」。そんなスタッフの思いをのせたお菓子は、お客さまにもしっかりと浸透してお店でも人気の定番商品となっている。取材の日に買い物に訪れていた女性にお話を聞いてみた。「このお店には、自分で食べるチョコレートを買いに来るんですが、人と会ったり、職場に差し入れする時に『SHIRO CACAO(シロカカオ)』を購入するんです。どの年代の人にも好評なのでとても重宝していますよ」。 実際に食べてみるとはっきりわかる。和洋折衷で幅広い層に受け入れられやすという一面もあるが、多くの人を魅了する理由は、やはりプロが仕込む厳選されたカカオの隠し味にあるのだ。

「BLUE CACAO」の展開

横浜の象徴である空と海のブルー、そして同社のトレードマークであるカカオを名に冠した新ブランド「BLUE CACAO」。その展開についてもお話を伺った。「『BLUE CACAO』の店名で横浜駅に出店したのは去年ですが、チョコレート専門店をつくるということで前身となるお店を出したのは、実は8年前なんです。その原点は、私が初めて修業に入った銀座の洋菓子店時代にさかのぼります。そのお店は当時では珍しいことに、チョコレートをちゃんと温度管理した部屋でつくっていたんです。チョコレート市場も成熟していなかった時代、洋菓子工場の中で他のお菓子と一緒につくっているお店がほとんどでした。本来チョコレートづくりは、温度管理がシビアで通常の菓子と一緒につくるのは到底無理なんです。修業先で学んだことは、本格的にチョコレートづくりをしたいと考えた時に、とても役立ちましたね。近年、時流にのってチョコレートに対するお客さまの理解も深まり、同時に望む品質がどんどん高くなっています。私たちは、初心を忘れずしっかりやっていくだけです」と服部様。謙虚な言葉に、ここ横浜から新しいショコラ文化を発信していきたいという真摯な思いを込める。

「火星人」で効率アップ!

 同社では、「SHIRO CACAO(シロカカオ)」の包あん作業に「火星人」をご活用いただいている。取材に合わせて生産現場も見せていただいた。「おはようございます。どうぞ、こちらで生産しています」と元気なあいさつで迎えてくれる。声の先では、ご担当の職人さんが手際よく「火星人」を操り、次々と商品をつくりあげていた。その様子にしばし見入りながら、「『火星人』での生産はいかがですか」と問いかけてみる。すると職人さんは、こう返してくれた。「私たち洋菓子職人は、包あん作業というのは普段あまり馴染みがありません。この作業は、『火星人』を使えば圧倒的に生産効率が上がります。せっかく良い道具を揃えていただいているので、上手く使いこなしていきたいと思います」。「火星人」導入について服部様はどんな考えをお持ちなのか聞いてみた。「同業者のオーナーさんたちが集まると、ちょっと前までは、お菓子づくりついての話で終始していました。ところが、最近は、よく環境づくりの話になりますよ。洋菓子業界は、どうしても12月から3月あたりが繁忙期になります。これをできるだけ一年間で平均化していきたい。完璧には無理だとしてもそうした環境をつくる努力をしていくのがオーナーの仕事だと思うんです。レオンさんの『火星人』導入もその一環です。ただ、ほかの機械もそうですが、あくまでも職人たちが使う道具として取り入れています。その道具を上手く使って効率を生んで、仕事は時間通りに終わりにできる。週に2日きちんと休める。そんな働きやすい環境のもとで良い人材が育ってくれればと思っています」。今回の取材で、服部様の言葉を通して思う。お菓子づくりも一番重要なファクターは、やはり「人」なんだと。

緑の園のパティスリー

相模鉄道緑園都市駅からゆるやかに続く坂道を上る。途中からお菓子の甘い匂いが漂ってきた。その匂いをたどれば「ラ・ベルデュール」様のお店に行き着く。今や土日の多い時には1日1000人を超える来客数を誇る超人気店であるが、服部様はあくまでもマイペースなやり方を貫いている。「ここも最初は、メイン通りから見えない小さなお店でした。昔も今も手広くやろうなんて気持ちはまったくありません。その時に最高のコンディションの材料を使って自分たちが納得のいくお菓子をつくりたい。そしてそれを喜んでくれるお客さまにお求めやすい価格で提供したい。それだけなんです」。その言葉には、人気ではなく本質を追い求める職人の気概が感じられた。
緑豊かな街、緑園。そのフランス語読みを店名に冠した「ラ・ベルデュール」。そこには、お気に入りのお菓子を求めて今日もたくさんのファンが足を運ぶ。